低温適応

生物は様々な温度に適応して生育しているがその生育の温度範囲は種によって決まっている。特に微生物は体温維持機構を持たないために、種によって決まった生育温度範囲をもっている。至適生育温度(増殖速度が最もはやくなる温度)が20から50℃の範囲にある菌は常温菌、それ以上の菌は好熱菌、それ以下の菌は低温菌と呼ばれている。低温では常温菌や好熱菌はほとんど生育できないが、低温菌は細胞内の諸機構が低温に適応して生育速度を維持している。低温で生育の遅くなる最大の理由は酵素反応速度がアーレニウスの法則に従って急速に低下することによる。本文で述べたように、低温菌の酵素は酵素反応速度が低温で低下しないような機構を獲得している。

常温菌が低温で生育できないもう一つの理由は低温での細胞膜の流動性の低下にある。膜脂質の流動性が膜タンパク質の機能発現にとって重要であるが、膜脂質は低温で液晶状態からゲル状態へ相転移をおこして流動性を低下させる。低温菌は脂質の不飽和度を増加させて相転移温度を低下させ、低温での膜脂質流動性を確保することにより低温に適応している。

さらに詳しい内容を知りたい方は以下の日本語の総説、本を参考にしてください: 進化分子工学を利用した蛋白質分子育種の実例 3)耐熱性酵素の低温適応原始生態系と生命の初期進化

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