ナノバイオテクノロジーは、バイオテクノロジーとナノテクノロジーを融合させた新たなものづくり技術のことを指します。
バイオテクノロジーは遺伝子工学や細胞工学の技術を利用して、医療、物質生産、環境保全等に役立つものを開発
する技術のことです。ナノテクノロジーの「ナノ」とは10のマイナス9乗を意味します。つまり、ナノテクノロジーとは10のマイ
ナス9乗メートル(1ミリメートルの百万分の1)スケールのとても小さな部品を材料に、ものづくりをおこなう技術です。従っ
て、「ナノ」と「バイオ」を融合させたナノバイオテクノロジーでは、ナノメートルスケールの大きさを持つ核酸やタンパク質等の
バイオ分子を用いて、新しい材料や素子、装置を作りだすこと目的としています。小さなモノをつくる方法としては2通り考
えられます。一つは大きなものを削っていくことによって徐々に小さくしていく方法、もう一つは原子や分子といったナノメート
ルスケールの部品を組み立てる方法です。ところが、削って小さくする方法では、削れる大きさに限界があります。組み立
てる方法にしても、現在の技術では、原子や分子を自在に動かすことは十分にはできません。一方、核酸やタンパク質は、
分子同士が自発的に結合する自己集合能力を持ち、場合によっては混ぜるだけで、自発的に機能する部品へと変化し
ます。この性質のおかげで、バイオ分子はナノテクノロジーの材料としてはとても優れていると言えます。さらに、核酸やタン
パク質等のバイオ分子は正確な分子認識能力を持っています。遺伝子組み換え技術等を利用することでバイオ分子を
改造することもでき、今までにないナノバイオ素材を作ることができると考えられます。また、バイオ分子から作られるナノ素
材は生分解性を持つことも1つの特徴です。生分解性とは微生物や生体中で分解できることです。そのため、ナノバイオテ
クノロジーで作られたナノ素材は環境や生体にやさしく、工学分野にとどまらず、農業、食品、医薬、エレクトロニクスの分
野での利用が期待されています。
極限環境生物学研究室では、タンパク質を人工的に重合化することによって、タンパク質でできた人工ナノ繊維を創り
出すことに挑戦している。