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最近行った研究、今行っている研究を紹介します

微生物共生の研究

 自然環境中で微生物は、栄養物質をお互いにやり取りし、効率よくエネルギーを獲得しています。このような共生関係が形成される際には、多種の微生物の中から好みのパートナーを探し出し、接近することが必要です。我々は、メタン発酵生態系に生息する発酵菌(Pelotomaculum, PT)とメタン菌(Methanothermobacter, MT)が共生する際に、それまで運動の道具と考えられていた鞭毛が、パートナーを探し出し、その代謝を活性化するための道具として使われていることを発見しました。この成果は、Science誌に掲載されました(Shimoyama et al. 2009. Science  323:1574)。


微生物生態系の比較ゲノム解析

 この図は、メタン発酵に関わる27種の微生物のゲノム中に存在するすべての遺伝子を、コドン使用の類似度を基に分布させたものです。各遺伝子は点で表され、微生物ごとに点の色を変えてあります。一つの色が固まっているのは(例えば赤)、その微生物のゲノム中の遺伝子が似通ったコドン使用をしていることを表しています。この図は、Self-organization map (SOM)法というコンピュータープログラムで作られました。ある種の微生物(黄緑)は、数か所に分離して点が集約されています。これは、比較的近い過去に数種のゲノムが融合してこの微生物が誕生した可能性を示しています。SOM法により、このような形で各生物の進化の道筋が見えてきます(Kosaka et al. 2008. Genome Res.  18:442)。

田んぼ発電

 これは、千葉県野田市の野田自然共生ファームにおける田んぼ発電の写真です。田んぼ発電とは、稲の根圏土壌にアノード(負の電極)を、すぐ上の水中にカソード(正の電極)を設置し、それらを電線で繋ぐことにより発電する方法です。現在は、1 m2の広さで数十mW程度の電力が得られます。つまり、数平方メートルの田んぼで発電すれば、携帯音楽プレーヤーを動かすことができます。この発電においては、稲が光合成により作り出した有機物が根から放出され、根圏の電流生成菌のエネルギー源となることにより電気が発生します。そこで、稲と微生物の共同作用(共生系)による太陽電池とも考えられています(Kaku et al. 2008. Appl. Microbiol. Biotechnol.  79:43)。


田んぼから単離した電流生成菌

 田んぼの土には、多様な微生物が生息しています。我々は、田んぼの土を微生物の植種源として、セルロースを燃料にした微生物燃料電池を立ち上げました( Ishii et al. 2008. BMC Microbiol. 8:6)。このなかの電流生成メカニズムを解明することを目的に、電極に付着した微生物の単離を行い、左の写真に示す細菌Mfc52株を単離しました。 この株は、純粋培養の微生物燃料電池において、酢酸などを燃料に電流を生成する電流生成菌でした。しっぽを使って、電極に付着します。分類学的解析により新種と認定されたので、我々はRhizomicrobium electricumと命名しました("electricum"は、電気という意味のラテン語; Kodama and Watanabe. 2011. Int. J. Syst. Evol. Microbiol. 61:1781)。


微生物太陽電池

 光のエネルギーを電気に変えるのが太陽電池ですが、生きた微生物を使っても太陽電池が作れます。左の写真では、中央に筒型の培養槽があります。これには、グラファイトフェルトのアノードが入れてあり、光と反対側に空気拡散電極のカソードが設置されています。これに無機塩培地を入れ、温泉バイオフィルムを植えて光を当てると、しばらくしてアノードの表面が緑色になり、それに伴い電流が発生するようになりました。形成されたバイオフィルムを解析した結果、その表面には藻類の層、その下に電流生成すると思われる細菌の層が形成されていることが分かりました。この結果は、藻類と細菌の共生系により光電変換がなされることを示しています(Nishio  et al. 2010. Appl. Microbiol. Biotechnol.  86:957)。

電流生成の分子メカニズムの解明
 電流生成菌は、エネルギー獲得を目的に電流を生成します。高等生物が行う酸素呼吸では、有機物を酸化分解して発生する電子を酸素に渡すことによりエネルギーを獲得します。一方、電流生成菌は、電極に電子を渡すことによりエネルギーを得ます(電極呼吸)。このようなエネルギー代謝は最近発見されたもので、科学的に大変興味深いものです。さらに、これを応用すればバイオマスなどから電気を作る微生物燃料電池が作れるので、応用の面でも注目されています。我々は、ゲノム解読が完了し、遺伝子組換えが可能なモデル電流生成菌Shewanella oneidensis MR-1株(シュワネラ、右の写真)を用いて、電極呼吸のメカニズムを解明するための研究を行っています(Newton et al. 2009. Appl. Environ. Microbiol. 75:7674; Kouzuma et al. 2010. Appl. Environ. Microbiol. 76:4151-4157)。 この菌は、細胞外に導電性ナノワイヤー(ナノスケールの電線)を作り、それを使って電極に電子を流すとも考えられています(Gorby et al. 2006. Proc. Nat. Acad. Sci. USA 103:11358)。

微生物燃料電池の開発・実用化研究
 微生物の多様な代謝能力を利用すれば、多様な有機物を燃料にできる燃料電池を作ることができます。純粋培養した単一の電流生成菌を植えて微生物燃料電池を作ることもできますが、土や汚泥などの自然微生物群集を用いることも可能です。このことは、どこにでも電流生成菌が存在することを示しており、どこでも微生物燃料電池を立ち上げられることを意味しています。左の写真は、バイオマス廃棄物を使って発電するための装置(カセット電極微生物燃料電池)です(Shimoyama et al. 2008. Appl. Microbiol. Biotechnol. 79:325)。装置の性能は、微生物の能力に加え、電極の構造やカソード触媒の性能にも依存します。高性能の微生物燃料電池を作るためには、生命科学に加え、電気化学や材料科学の知識や技術も必要なのです。例えば、電極を導電性ナノ構造で修飾すると、発電量を上げることができます(Zhao et al. 2011. Phys. Chem. Chem. Phys. 13:15016)。



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