List of class taught by takasu thermodynamics Book Review Part 2

書評 Part 2

    by 高須     2002.3.1
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とあるマイナーな場所に、2001年後半から2002年にかけて書いた書評です。
(1)ジャック・ウエルチ
(2)スターバックス成功物語
(3)第3の教育
(4)考える力・やり抜く力
(5)光の教会、安藤忠雄の現場
(6)イノベーションのジレンマ
(7)20歳の頃
(1) Jack Welch, Jack -- Straight From the Gut, Warner Books, 2001
(日本語訳は「ジャック・ウエルチ、わが経営」です。)

ダイジェスト版が日経新聞の「私の履歴書」欄に2001年10月に載ってました。
本屋さんで山積みになっているので、読まれた方も多いかもしれません。
原文はわかりやすい英文なので、お勧めです。

私がおもしろかったのは前半部分です。ウエルチさんは、
大学院の博士課程で化学工業を専攻した後、GEに入社しました。
大学院で学んだ、結果を出して論文を書くこと、よく考えることが
役立ったようです。

そういえば、MITの調査で、卒業生は卒業後3年で半数が専門以外の
分野の仕事をしているとか。
専門は入社するためのパスポートのようなもの、それ以後は
いろいろな分野の仕事をしていくようです。

日本でも、博士課程卒の人を企業で採用するようになってきました。
でも、「ずっと研究所勤務」という人が多いようです。
研究から経営に移って活躍する、第2のジャックウエルチさんが
出てきてほしいものです。


(2) Howard Schults, Pour Your Heart Into It,
How STARBUCKS Built a Company One Cup at a Time,
Hypoerion, 1997.

(翻訳も出てます。「スターバックス成功物語」)

スターバックス創業者のシュルツ氏の自伝です。 貧しい家庭に生まれ、フットボールの奨学金でようやく大学に行けた
シュルツ氏は、大学卒業後Xerox社で安定した仕事を手に入れます。
しかし、イタリアでおいしいコーヒーに目覚め、事業に乗り出します。

会社がだんだん大きくなるにつれて、シュルツ氏も合わせて成長していく所が
立派だと思いました。最初は「John Wayne School of Management」
(西部劇風のマネジメント?)と言われてましたが、
ビジネススクールの教授にコンサルティングしてもらったり、
自分でも本を読むうちに、次第にきちんとしたマネジメントに
変えていくことができました。

日本でも最近スターバックスの店が増えてきました。
株式上場も果たしました。今後どうなるか楽しみな会社です。


(3)炭谷俊樹「第3の教育--突き抜けた才能はここから生まれる」

角川oneテーマ21、角川書店、2000年12月。571円。

マッキンゼーで10年仕事をされた著者が、学校を始めた話。

デンマーク駐在中に、お嬢さんが現地の学校に入り、
その時の教育がすばらしかったようです。
日本に戻ってくると、見学した幼稚園の壁に、同じような絵がはってあり、
がっかりされました。「子供を行かせたい学校がない。
それなら自分で作ろう」と神戸に「ラーンネット」を設立されました。

お子さんがいらっしゃる方、部下の教育に悩まれてる方、
広く教育問題の興味のある方におもしろい本だと思います。


(4) 中村修二著「考える力、やり抜く力、私の方法」、三笠書房、1400円。

青色ダイオードで有名な、中村氏の半生について書かれた本です。

この本は、「もし中村氏が社内にいたとして、会社側としては、
どういう対応をすればよいか?」を考えさせてくれます。

中村氏の開発にゴーサインを出し、上司の指示に従わなくても黙認した
寛容な会社であった、という見方もできます。

一方で、大発明をした中村氏によい処遇を与えることができず、
最後は裁判にまでなってしまった、まずいマネジメントの例、
という見方もできます。

また、中村氏側から見れば、「どの辺で会社に見切りをつけて、
脱出するのがよいか?」というケーススタディにも見えます。
あるいは、「いい発明をするには?」という研究開発の話としても
読めます。

いろいろな読み方ができるこの本、お勧めです。


(5) 平松剛著、「光の教会、安藤忠雄の現場」、
建築資料研究社、2000年。1900円

建築家の安藤氏が茨木(大阪)で教会の設計を依頼され、
作り上げる物語。

たまたま日経新聞で安藤氏が紹介されていて、注文した本です。
私は建築は素人だし、キリスト教徒ではないので教会は詳しくないですが、
読んでみたら、実におもしろいです。

教会の人、工務店の人、構造設計の人と何度も話をしながら、
斬新な設計を実現していくプロセスが詳しいです。

安藤事務所での新人教育のやり方、安藤氏の20代の頃の旅の話もあります。
作りっぱなしでなく、できた後も、床を皆で塗り替えたり、
建物への愛情が感じられました。

プロジェクト管理で悩んでられる方、人生の目標を探してられる方にも
役立つ本だと思います。


(6) C. M. Christensen, The Innovator's Dilemma, HarperBusiness 2000.

(翻訳も出てます。「イノベーションのジレンマ」)

イノベーションのマーケティングの本です。
著者はイノベーションを2つに分けてます。
既存の顧客から理解されやすい継続的なイノベーションと、
新しい市場を見つけないといけない不連続なイノベーションです。

「顧客の声を聞け」とよく言いますが、
不連続なイノベーションには通用しません。
現在の市場と違う所に顧客がいるからです。

大企業は不連続なイノベーションを見つけることができず、
失敗することがあります。大企業が不連続なイノベーションに成功するには、
組織を小さく独立したものにするなど、処方箋も書かれてます。


(7) 立花隆他「二十歳の頃」新潮社、1998年。

立花氏が東大で開講した「調べて書く」というゼミの作品です。
学生が各自興味がある人の所に行って、
「20歳の頃何をしていたか」を聞いたインタビュー集になってます。
100人近い人たちの話が載ってます。

裏表紙には、立花氏が学生に伝授した、インタビューのノウハウ集も
載っていておもしろいです。

私はこの本の中で、最初は興味のある人、聞いたことのある人だけ拾って
読んでました。でもおもしろいので、結局全部読むことになりました。

20歳の頃に戦争があった人、ひたすら勉強していた人など、いろいろな
話があります。「人それぞれなのだなあ」と思いました。

20歳の頃を思い出すと、「自分が本当は何をしたかったのか?」を
考える手引きになるかもしれません。


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