ソフトマター
ソフトマターは液体と固体の中間に位置する物質の総称です。例としては高分子、液晶、ゲル、コロイド、界面活性剤などがあげられます。ソフトマターは分子が自己集合した数nm〜数μmの単位から構成されているため、様々な分野への応用が利くと言う特徴があります。身近な物質ではタイヤに使われるゴム、プラスチック製品、食品のゼリー、化粧品に含まれる物質、実験に用いられる電気泳動用アガロースゲルなどがソフトマターに当たります(図1および2)。本研究室ではソフトマターであるゲル物質に関する研究を行っています。(2014年7月 和出記) ページ上部へ
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高分子ゲル
高分子ゲルとは、モノマーの集まりである高分子によって形成される網目構造の内部に、溶媒物質を含むものの事を言います(図1)。特徴として高い溶媒吸収性と柔軟性を持っています。網目構造は高分子の架橋により形成されており、この架橋方法の違いにより高分子ゲルは「化学ゲル」と「物理ゲル」の2種類に分ける事ができます。前者は共有結合によって架橋されたもので、例としてコンタクトレンズや吸水性をもつ紙おむつなどが挙げられます。化学ゲルが外部刺激に対し基本的に安定な状態を維持するのに対し、物理ゲルは熱によって溶融体に変化するといった特徴を持ちます。後者は水素結合やイオン結合によって架橋されたもので、例としてゼリー(図2)などが挙げられます。(2014年7月 和出記) ページ上部へ
脂質膜
脂質分子は親水性の頭部と疎水性の尾部から構成され、それらの相対的な大きさに依存して自己集合して様々な形状の脂質膜となります。ほぼ1:1の場合は閉じた膜の構造をとり、これは細胞膜や細胞小胞、リポソームなどあらゆる場所に見られます。このときエネルギーを低くするために脂質分子は疎水性部位が内側に、親水性部位が外側になった二分子膜が構成されます。脂質分子は膜中である程度自由に移動することができます。よって脂質膜は様々な形状に柔軟に変化することができます。(2014年7月 糸賀記) ページ上部へ
原始細胞
原始細胞は前生物的な進化と生物的な進化の狭間を埋める存在として考えられるモデルです。誕生したとされる場所は海の中であったり、水たまりであったり様々な説が存在しますが、原始細胞がどのような構造であったかという点でほぼ一致しています。閉じた脂質膜で構成され外と内が存在することで環境から仕切られていること、環境から核酸を取り込み酵素の触媒無しに核酸鎖を合成すること、自己増殖能をもつことなど細胞複製に必要な特徴をもっていたと考えられます。(2014年7月 糸賀記) ページ上部へ
タンパクの立体構造
タンパク質は20種類のアミノ酸の配列からなる生体高分子の一つです。タン パク質の構造は4つの階層的構造(一次構造、二次構造、三次構造、四次構造) で定義されています。一次構造はアミノ酸配列を表します(図 1)。二次構造は タンパク質中における局所的な立体構造のことです(図 2)。構造の分類として ヘリックス、ストランドおよびループ等があります。三次構造は二次構造が折 り畳まれたタンパク質の立体構造を表します(図 3)。四次構造は複数の三次構 造が集まった一つの複合体構造のことです(図 4)。(2014年7月 山田記) ページ上部へ
クリスタリン
クリスタリンは水晶体を構成している分子量約2万のタンパクです。哺乳類ではα, β, γの3種類が存在し, それぞれ違った働きを持っています。 αクリスタリンは、部分的に変性したクリスタリンを元に戻す機能を持っています。一方β, γクリスタリンは水晶体の透明性の維持に関与しており、光の屈折率を高める機能を持っています。 クリスタリンの突然変異や変性は白内障発症の原因になります。(2014年7月 小澤記) クリスタリンの構造 ページ上部へ
クリスタリンの構造
水晶体
水晶体とは角膜の中に存在する透明の組織で、ピントを合わせる役割を持っています。水晶体はチン小帯という筋肉が繋がっていて、見る対象が近くにある時は筋肉の緊張を緩めて水晶体を厚くし、遠くのものを見るときは筋肉を緊張させて水晶体を薄くすることでピントを合わせます。 生体内の中では数少ない透明な器官で、その透明度に関与しているクリスタリンというタンパクが変性すると白内障を発症します。(2014年7月 小澤記) ページ上部へ
インクレチン
インクレチンとは、膵(すい)β細胞に作用してインスリン分泌を促進するホルモンの総称です。 食事をすると腸管からインクレチンが分泌され、血液に運ばれて膵臓に到達するとインスリンの分泌を促すため、食後上昇した血糖値が下がります。この作用は血糖値が正常な時には働かないという特徴を持つため、血糖値を上手くコントロールできる物質としてII型糖尿病の治療への応用が注目されています。本研究室ではインクレチンホルモンの1つであるGLP-1の立体構造解析を行っています。 図のキャプション:インクレチンホルモンの立体構造。(2014年7月 森記) インクレチンの構造 ページ上部へ
インクレチンの構造
抗がん剤
悪性腫瘍は日本人の2人に1人が煩い、日本人の死因の第1位でもある疾病です。そこからも分かるように抗がん剤の開発は重要な研究です。 既存の抗がん剤としては抗酸代謝やDNAの複製を阻害する化合物をはじめ、癌特有の物質に作用する分子標的薬やホルモンとして作用する薬剤が用いられています。(2014年7月 野口記) ページ上部へ
ファーマコフォア(pharmacophore)
薬剤が標的に作用するためには、その化合物の形が重要です。『ファーマコフォア』とは薬剤が作用を発揮するのに必要不可欠な分子の形のことをさします。 ファーマコフォアを特定することは、その薬剤をより良いものにするために重要な 情報であると考えられます。ファーマコフォアを知るためには活性と構造の関係 (構造活性相関) の解析が必要です。これらの解析は実験科学だけではなく量子化学 計算や分子動力学計算のような計算化学の分野も活躍しています。(2014年7月 野口記) ページ上部へ
周期境界条件
中心にある立方体を基本セルとし、さらに上下左右に全く同じセルがあると仮定します。周期境界条件とは、ある粒子がセルから飛び出すと、飛び出した側と反対側から粒子が同時に同じ運動をしながら飛び込んでくるという考え方のことです。 計算機で扱う事が難しい無限な系を小さく区切り、有限な系を作る事で、擬似的に無限な系を扱う事ができるようになります。(2014年7月 小澤記) ページ上部へ
シュレディンガー方程式
シュレディンガーは定常波の式に『電子や原子が量子と波動という2つの性質を併せ持つ』というド・ブロイの関係を導入する事で電子の運動を求めました。この方程式をシュレディンガー方程式といい、で表されます。 (はハミルトン演算子、は波動関数です。) この発見により量子化学の学問が幕を開けることとなりました。(2014年7月 野口記) ページ上部へ
分子動力学法
分子動力学法は分子、タンパク質やペプチドなどの動きをコンピュータ上で計算する手法です。分子を構成する各原子の動きは、一般に古典力学におけるニュートンの運動方程式()で記述されます(図 1)。分子動力学法は分子 を構成する原子一つ一つの動きを追跡することができ、例えば、タンパク質の フォールディングの調査やタンパク質の立体構造予測などにおいて、有用な方法の一つです。 (2014年7月 山田記) ページ上部へ
分子力場
分子動力学法では原子同士の結合をバネと捉え、結合距離や結合角などが理想値から離れるほどエネルギーが高い不安定な状態、近いほどエネルギーが低い安定な状態と考えます。原子の種類や組み合わせによって理想値が異なるため、種類毎に係数(パラメータ)を変える必要があります。分子動力学シミュレーションでは計算をスムーズに行うため、このパラメータをまとめたパラメータセット(これを分子力場と呼ぶ)を用いてエネルギー計算を行っています。 分子力場は、結合している原子間に働く力を表す分子内力場(共有結合など)と、結合していない原子間に働く力を表す分子間力場(ファンデル・ワールス力、クーロン力など)の2種類に分けられます。 図のキャプション:バネで表現した結合長と結合角。(2014年7月 森記) ページ上部へ
量子化学
量子化学とはシュレディンガー方程式に基づいて分子を構成する原子や電子の振る舞いを求め、物質の性質を知ることです。 量子化学計算で得られる分子の立体構造や電子密度などの情報はファーマフォコアを明らかにする為に重要な情報です。 そのため創薬化学の観点からも量子化学は非常に有効なアプローチ方法の1つであると言えます。 (2014年7月 野口記) ページ上部へ
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