まめ知識

大気球実験とものづくり

 2015年8月、成層圏に浮遊している微生を大気球で捕まえるために北海道大樹町(帯広地区)に来ています (図1)。千葉工業大学惑星探査グループ、大野宗祐研究員を代表とする成層圏での微生物捕集実験に共同研究者と参加しているためです。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の気球グループが大気球のセッティング、打ち上げ等の実際の作業を行います。

 これまで、地球上空に微生物が存在するかを調べるために航空機、大気球、ロケットを用いて調べられてきました (図2)。その結果、対流圏(高度0-11 km)では胞子を作成する枯草菌(納豆菌の一種)、放射線に高い耐性をもつ微生物や、マイコプラズマなどわれわれの身近にいる微生物が発見されました。さらに上空の成層圏(11-50km)では微生物密度が低くなるものの、胞子を形成する微生物が発見さした。これまでの採集実験の最高到達高度は77kmです。それ以上の高度での微生物の有無はわかっていません。そこで、高度約400kmを周回する国際宇宙ステーションで微生物の捕集実験を行うたんぽぽ計画が行われています。

上空微生物の捕集方法と微生物の分布

 さて、これまで大気球を用いた微生物の捕集実験では、採集装置が気球の下に設置してあることから大気球由来の微生物が捕集されているのではないか、という問題点が指摘されてきました。この問題点を解決するために、千葉工大のグループでは微生物を採集するために採集装置の吸引口を下に向け、気球が落下する際に吸引口を一定時間開き、閉めるという独自の装置を開発されました (図3)。採集装置を一から設計し、それを形にして、気球実験用の装置に取り付け完成させるというのは並大抵の作業量ではなく、幾度ものトラブルを解決して、さらにトラブルを解決するということを幾度も繰り返します。些細な問題でも必ず議論し、どうするかをみなで考え答えを出します。その答えが間違っていて、もう一度振り出しに戻りやり直し、ということも多々あります。かつて、スペースシャトルのチャレンジャー号はたった一つのOリングに不備があったことが原因で爆破し、宇宙飛行士の命が断たれました。大気球実験では人命はかかってはいませんが、多くの人の労力と国民の税金で成り立っています。私が参加したのはわずかな時間でしたが、千葉工大のメンバーが、早朝深夜にわたり、細部まで決して議論をないがしろにしない姿勢と、問題が起こっても乗り越えるバイタリティーを間近で経験し、本当に勉強させていただきました。生物学者の多くは、既存の装置を使い研究を進めることが多いですが、今後は自分たちの知りたいことを知るために装置を設計し作り上げることが非常に重要になってくると感じました。

採集装置、バッテリー、制御部、フロートをのせたゴンドラ。
これを気球に吊るし、上空に持ち上げる。

 ちなみにこの大気球実験は天候不備とジェット気流が弱いという理由でまだ実施されていません。再度チャレンジし、今後の解析で上空微生物の生態を明らかにしたいと思います。