シンポジウム「宇宙をわたる生命」が開催されました

あいにくの雨天のなか、当研究室の山岸明彦教授を中心とした国内8機関の研究者で構成される宇宙環境利用科学研究ワーキンググループ「たんぽぽ」が主催したシンポジウム「宇宙をわたる生命」と公開ワークショップが開催され、多数の方に参加いただき、会場はほぼ満員の盛況となりました。 国際宇宙ステーションで微生物を採集することから生命が地球から他の天体へ移動した可能性を検討しようという実験を、当ワーキンググループでは提案しています。この提案は2011年より実施する宇宙実験の11の候補の一つとなっています(http://kibo.jaxa.jp/experiment/theme/jef02/pick.html)。また、生命の誕生の材料となる有機高分子化合物が、宇宙塵と共に地球へ到達する可能性を検討する実験を同時に提案しています。

シンポジウムは、宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究本部の山下雅道教授の司会で始まり、山岸教授の開催挨拶に続き、東京工業大学及び東京薬科大学名誉教授であり、当研究室の前教授でもある大島泰郎博士により、「生命の起源に係わる今日の諸問題」という演題で生命の起源についての講演が行われました。お話は、生物の生死の境とは、という話にまで及ぶ、幅広いものでした。続いて、宇宙航空研究開発機構・宇宙環境利用センターの織田裕久氏による「国際宇宙ステーション計画と曝露部利用計画」という演題での講演がありました。ここでは、国際宇宙ステーション建設の現状と、日本の国際宇宙ステーションでの研究計画についての概要の解説がされました。宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究本部の矢野創助教は「スターダスト計画とサンプルリターン、たんぽぽ計画」という演題で、ご自身の関わったスターダスト計画をはじめとする地球外天体からのサンプルの回収実験とたんぽぽ計画の意義についてお話しされました。最後に山岸教授が「高層大気での微生物探査とたんぽぽ計画」の演題で、これまで行ってきた成層圏等での微生物の探査実験についての解説とその延長線上の研究であるたんぽぽ計画における、微生物の探査実験計画についてお話しされました。

引き続き行われた公開ワークショップでは、「たんぽぽ」ワーキンググループのメンバーにより、たんぽぽ計画の目的とその研究の現状についての報告がありました。まず、当研究室の横堀伸一講師により宇宙空間での微生物の直接曝露実験計画の説明(「微生物の宇宙生存可能性」)がされました。続いて、横浜国立大学の小林憲正教授による生命の起源に関わると考えられる地球外の有機物質研究についての現状とその採集計画についての説明(「宇宙での有機物採集」)がされました。大阪大学の中嶋悟教授(「赤外分光による有機物探査」)と福岡工業大学の三田肇教授(「有機物の微量分析」)は、それぞれ地球外起源有機化合物の解析方法について議論されました。千葉大学の河合秀幸准教授はたんぽぽ計画における宇宙サンプル捕獲に用いる超低密度エアロゲルについて実物を交えて説明されました(「超低密度エアロゲルの宇宙利用」)。筑波大学の橋本博文准教授は、たんぽぽ計画の宇宙微粒子採集および曝露実験用機器の設計についてお話しされました(「宇宙微粒子採集装置の設計」)。  質疑応答の時間には、数多くの質問が寄せられ、非常に盛会のうちにワークショップも終了しました。


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