資格合格体験記

2014年度 応用情報技術者および情報セキュリティ管理士 合格

徳冨 夏樹 さん

高度区分へのステップアップ資格

生命科学部3年
(暁星国際高等学校出身)

 今回、情報系の国家資格である応用情報技術者と、同様に国家系の情報関連資格である情報セキュリティ管理士を、皆様のご協力により、無事取得する事ができました。また、勉強の時間を確保できた事や、良い参考書に巡り会えた事、広い試験範囲から興味ある分野を見つけ出せた事なども、受験の上での非常な幸運でした。

 応用情報技術者は、各種高度区分の下位に位置する資格であり、ITを活用するための素地を問う資格と言えます。合格率は二割程度とやや低いのですが、この資格の合格者は、基本情報技術者よりも高度な技術を持つ者と認知され、また、高度試験の一部が免除されます。試験範囲は広範に渡り、ITについての総合的な知識が問われます。

一方、情報セキュリティ管理士は、企業における教育を主眼とした試験であるため、比較的易しく、合格率は五割程度です。取得により、情報セキュリティについての基本的な知識がある事を証明できます。範囲は応用情報技術者と重複しており、出題の大部分は、応用情報技術者の知識で対応できるものです。また、高度区分の一つである情報セキュリティスペシャリストの内容と共通しているため、高度区分へのステップアップ資格として利用できます。

 本学部のカリキュラムは、充分な期間の春休みと夏休みを設けており、それぞれ春期試験と秋期試験の対策に充てる事ができます。また、本学部の必修科目には、基礎生命科学実習I・II、分子生命科学実習や環境ゲノム学実習と言った実習科目があり、コンピュータを使用したDNA解析などを通じて、生命科学におけるITの応用を学ぶ事ができます。更に、選択科目のEnglish and Life Sciences in the USAでは、ITにおいて重要な概念・用語の基礎となっている英語の理解を深める事ができます。ITに関連する組織名や規格名、プログラム言語のほとんどが英語を使用している事は、ご存知の通りです。

 情報処理技術者試験では、過去問に勝る参考書はありません。これは、毎回の試験において、試験問題の一部が過去問から出題される事と関係があります。全ての過去問について反復演習を行う必要はありませんが、特に実務経験がない学生の場合は、ある程度の問題演習は必須となるでしょう。その際には、他の試験区分の問題や、著者が独自に作成した問題を掲載している参考書に注意する必要があります。個人的には、iTECの重点対策シリーズが、特に午後問題の対策で有効だと思いました。

 一方、情報セキュリティ管理士試験では、公式テキストや過去問の他にほとんど参考書が見つからないため、受験にあたってはそれらを使用しました。過去問は市販されていないため、入手するには、試験を主催している全日本情報学習振興協会のウェブサイトで購入手続を行う必要があります。過去問演習は大変有効であり、僕自身、試験会場でその効果を実感しました。しかし、ITの中でも特に情報セキュリティの分野は日進月歩であり、数年の間に教科書の内容が書き変わる事も珍しくありません。そのため、常に最新の話題に触れている事が重要になります。また、先ほども申し上げた通り情報処理技術者試験との範囲の重複があるため、多数あるそれらの参考書も、過去問と同様に役に立つでしょう。

 ところで、これは失敗談ですが、実は、応用情報技術者の受験は今回が初めてではなく、昨年の秋期にも受験していました。そのときは、午前問題では問題なく合格する事ができましたが、午後問題で点が足りず、僅差で合格を逃してしまい、悔しい思いをしました。当時は、最年少の合格者が11歳の方という事で、インターネットが大いに賑わっており、複雑な思いを抱いたものです。今回は、図らずも合格基準点に対して僅差での合格となってしまいましたが、前回の雪辱を晴らす事ができ、受験した甲斐がありました。

 応用情報技術者の試験範囲は広範に渡り、情報理論やハードウェアの知識はもちろんの事、統計処理や数学モデル、プログラミング、企業経営、法務、会計の知識なども問われます。しかし、これらはいずれも基礎的であり、基本情報技術者の予備知識があれば問題なく学習を進める事ができます。個人的には、会計や経営が完全な専門外であったため、興味を持って学習に取り組む事ができました。

 生命科学部生としては、統計に馴染みがあり、また、オブジェクト指向などもシグナル伝達のアナロジーとして理解できました。例えば、インスリンの分泌による血糖値の低下と言ったシグナル伝達のイメージは、オブジェクト指向プログラミングにおけるオブジェクト間の相互作用と、抽象的な意味において相同のものです。この時、細胞や分子はオブジェクトとして、インスリンやリン酸化などはある種のメッセージとして捉える事ができます。また、バイオ系の実験では、多くの場合、結果の検定に統計処理が用いられ、実験結果を解釈するのに各種の統計量を活用する必要があります。統計とシグナル伝達は、両方とも本学部で学ぶ事ができる概念です。

 一方、情報セキュリティ管理士試験は、不正アクセスの手法や情報セキュリティ関連法規、国際基準に重点が置かれている印象でした。個人的には、法規や基準が興味深かったのですが、各々の区分における七割以上の正解が合格条件であるため、受験にあたっては偏りなく学習する必要があります。

ところで、一昨年に京都大学の山中伸弥教授がノーベル生理学・医学賞を受賞しましたが、細胞の初期化を表わす語は「reprogramming(再プログラミング)」でした。情報科学と生命科学にはいくつかの共通点が見られますが、使用される語彙の部分的な一致は、その中でも最も興味深いものの一つです。ウイルスやプロトコル、bpsやUDPと言った各種の短縮形など、例を挙げれば、枚挙にいとまがありません。

 一般に、ウイルスは悪意あるプログラムの総称であり、また、風邪などを引き起こす濾過性病原体の呼称としても知られています。生命科学におけるプロトコルは、実験の手続を表わした手順書ですが、情報科学では、コンピュータ間における通信の規約です。bpsは複数の塩基対(base pairs)を表わす単位ですが、ビット毎秒(bit per second)という通信速度の単位でもあります。UDPは、単糖の活性化に重要な役割を担うウリジンヌクレオチドの一種(ウリジン二リン酸;uridine diphosphate)ですが、TCPと同じ、OSI基本参照モデルにおける第四層のプロトコルの一つ(User Datagram Protocol)でもあります。また、生命科学では、「プログラムされた細胞死」のような表現もしばしば用いられます。

 これは、生命科学と情報科学が、ほぼ同時期に基礎づけられ、お互いに影響を与えながら別々に発展してきた事と関係がありそうです。これからは、コンピュータを用いて生命現象を解析するバイオインフォマティクスの進展により、両分野のより有機的な発展が期待できるのではないかと思います。

 今後は、情報セキュリティスペシャリストやネットワークスペシャリスト、データベーススペシャリストなどの高度区分の試験に挑戦していきたいと思います。また、バイオインフォマティクス技術者試験も視野に入れていきたいです。最後に、個人的な話になりますが、試験勉強中に心強いサポートをしてくださった教員の方々や家族、友人の皆に感謝します。

参考書
『午後問題の重点対策 応用情報技術者』 小口 達夫 著, 有限会社ワークス, iTEC

(2014年8月記)