卒業生メッセージ

生命科学部には、多様な興味を支えてくれる懐の深さがありました

今清水 正彦 さん

2002年 環境生命科学科(現応用生命科学科)卒業(環境応答生物学、現環境応答植物学研究室)
2007年 東京大学大学院 農学生命科学研究科 博士課程修了
アメリカ国立衛生学研究所/国立がん研究所(NIH/NCI) Research Fellow

 私は研究が好きなので、大学卒業後に大学院で博士号を取り、アメリカ国立衛生学研究所の国立がん研究所(NIH/NCI)で基礎研究を続けています。NIHは巨大な研究機関ですが、私の職場はメリーランド州のフレデリックというこじんまりとした町にあります。緑豊かでワシントンDCも近くて住むに良い所と思います。私の職場は、ロシア人、ポーランド人、フランス人、そして日本人(私)と少人数ですが国際色豊かです。偏った考えが優位にならないような批判をし合えること、他の文化を楽しめること等、国際チームで働く利点は多いと思います。研究所では、遺伝子発現を行う酵素反応の正確性を維持する仕組みを調べています。 この酵素反応が間違いだらけだと生物は破綻しますから、正確な酵素反応の仕組みは生物の本質の1つと思います。アメリカに来て幸運だったことは、自分の興味の範囲で、とても深い議論ができる人と出会えたことです。

 仕事選びの基礎となっているのは、生命科学部での師や友人、学問との出会いです。高校の時は、何かしたい強い欲求があったのですが、それが何か良くわからないままブラブラし、卒業するのがやっとの状態でした。それが何であるかが明確になり、目標に向けて健全に努力するようになったのは、生命科学部の沢山の恩師と環境が、自分が育つためのきっかけを提供して下さり、しっかり支えて下さったからです。大学というのは、座って講義を聴いてノートをとっているだけでは、無意味な所と思います。自分が育つきっかけは、もちろん自分にも必要で、私の場合は研究室を訪れたのがそのきっかけと思います。一度足を踏み出せば、生命科学部には、多様な興味を支えてくれる懐の深さがありました(今もあると信じます)。

 また、学年を問わず良き友人に出会いました(友人の方が先輩・後輩という概念に優先するので、全て友人と書きます)。私は3回生の時から、呼ばれなくとも昼も夜も研究室に入り浸っていたので、研究室内に沢山の友人ができました。1つ学年が上の友人の家によく泊まり込み、沢山のこれからの夢を語りました。その友人は、大学院でバイオ教育の会社(リバネス)を作り、今ではその事業を科学全般に広げています。 3つ学年が上の友人(当時)と私は結婚し、アメリカで娘が産まれました。私たちにとってかけがえのない新しい命も、生命科学部での出会いから始まったことになります。海外生活ですから、家族は大きな心の支えになっています。他にも、社会で活躍されている友人は沢山いて、良い刺激になります。私は出世からほど遠いですが、自分の興味の中枢で仕事を行うことは実現できています。この先も研究を続けることに沢山の不安がありますが、10年以上前の大学での出会いが多くを占める今が幸せであることは確かです。