卒業生メッセージ

海外便り 〜フランス滞在記〜

小野寺 威文 さん

2013年 3月 東京薬科大学大学院 博士課程修了 (環境分子生物学研究室、現・応用微生物学研究室)
2013年 5月 日本原子力研究開発機構(日本学術振興会特別研究員PD)  
2013年   Université de Paris-Sud XIに留学中

〜極限環境微生物〜
 私は、東京薬科大学大学院在籍時から70℃という高温環境を好んで生育する高度好熱菌サーマス・サーモフィルスや高線量の放射線に耐性をもつ放射線抵抗性細菌デイノコッカス・ラジオデュランスといった極限環境に住む“ちょっと変わった”微生物を研究対象にしてきました。極限環境とは温度、pH、圧力、乾燥、放射線耐性などといった一般的な微生物の生育環境と掛け離れた環境を指します。博士課程終了後は、パリ南大学(Université de Paris-Sud)に留学し、ラジオデュランスの放射線耐性機構について研究しています。ラジオデュランスは、ヒトの致死線量の1000倍以上の放射線に耐性があり、他にも紫外線やDNA損傷を誘発する化学物質などにも高い耐性を示します。この驚異的な放射線耐性の理由の一つに強力なDNA修復能力が挙げられます。ラジオデュランス特有のDNA修復タンパク質も発見されていますが、他の生物が持つ既知のDNA 修復タンパク質のほとんど全てを持っていることも知られており、DNA修復能力の詳細ははっきりと分かっていません。ラジオデュランスのゲノム中には未だ半数を超える機能未知遺伝子が眠っていて、この中に放射線耐性に大きく寄与している遺伝子群があることが十分に予想されます。現在いくつかの遺伝子を標的としてDNA修復機構や放射線耐性機構との関連性及びその機能解明の研究に取り組んでいます。

〜フランス生活〜
 仕事の話ばかりでしたので、フランス生活の話も少ししたいと思います。パリ南大学はその名の通り、パリより南へ約30kmのオルセー(Orsay)という街にあります。キャンパスは非常に広大で自然に囲まれており、大学周辺にはサッカーグランド、テニスコート、プールなどがあります。私はオルセーにアパートを借りて住んでいて、アパートから大学へは徒歩で20~30分程度かかります。家具付きのアパートでしたので食料品だけ買ってくればすぐに生活することができました。自宅周辺にはスーパーが一軒とレストランが数軒ありますが、コンビニなどある訳がなく、夜8時を過ぎると店は閉まってしまうため食料を手に入れるのが困難な状況になります。大学の同僚たちの帰宅時間が早い(19時頃には誰もいなくなります)理由は、こういうところにあるのだろうなと感じます。パリはとても有名な観光地なので、プライベートで旅行されたことのある方も多いと思います。自宅のアパートからは郊外高速鉄道RER B線で40分ほどでパリ市内に行けるので週末はパリに出かけて凱旋門や美術館、博物館の観光・鑑賞や料理、ワインを楽しみつつ日々の疲労をリフレッシュしました。ただ、基本的にフランス語なので苦労も多々ありましたが・・・。

~終わりに〜
 生粋の日本人である私にとって、自分と異なる考え方をする人々に出会い“キリスト教の”、“欧州大陸の”、“石造の”文化に触れながら研究や生活できることは、大変有意義なことであり自分の価値観や視野を広げることができる絶好の機会であると感じています。東京薬科大学で出会った極限環境微生物に夢中になり、気がつけばフランスに来ていたこの人生、何がきっかけでどう転ぶか分からないものです。しかし、東京薬科大学で過ごした時間が大きく影響していることは確かであり、大学で学んだこと、経験したことがフランスでも確実に役立っています。夢中になるものを持っている人はそれを大事に育て、そんなの無いよという人も焦らずゆっくり探してみて下さい。大学で生活する、社会に出る前、というのはそういう時間だと思います。何か考えがあるなら、まずは行動してみることが一番かもしれません。自身もまだまだ未熟なくせに偉そうな事を言ってしまいました。最後になりますが、大学院時代にお世話になりました先生方や諸先輩方、仲間たち、そして良くして頂いている現ラボメンバーに感謝致します。